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「影武者」 [映画]

 黒澤明監督の作品の中で「やや失敗作」ではない
かと思っているのがこれである。この次の「乱」は完
全に「失敗作」だと思うが、影武者についてはそれほ
ど酷くは無い。ただ、武田信玄という人物の描き方、
そして音楽の使い方に疑問がある。


 実はこの映画の予告編は魅力的であった。スッペ
の軽騎兵序曲にのって、影武者が甲州軍を鼓舞す
る場面や、兵が地平線から次第にその姿を現す場
面など、ワクワクしながら見ていたものである。

 ところが本編になったら、これらクラシック系の選曲
は皆無。今までの重々しい黒澤映画風音楽になって
しまった。序盤はけっこう素敵である。泥にまみれた
伝令の兵士が、城の坂道を駆け上がる。すると死ん
でいたのかと思われた赤や青の鎧武者たちがつぎ
つぎに立ち上がる。この場面を見たときは、黒澤の
才気、いまだ衰えず…!と期待した。


 しかし、中盤以降は…ストーリーのテンポが大幅に
遅くなり、憂鬱な映画になってしまった。やはり、当初
予定の通り、勝新太郎主演で製作した方が良かった
のではないかと思う。残念至極である。


影武者.jpg
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