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大島渚監督の「愛のコリーダ」と「愛の亡霊」を偲ぶ [映画]

 大島渚監督が亡くなった。それがしは、大島監督
作品をけっこう観ていた。特に「愛のコリーダ」という
映画と「愛の亡霊」については、封切直後に映画館
へ足を運んだものである。


 愛のコリーダの題材は、「阿部定事件」である。戦
争の足音が聞こえる昭和初期。愛欲にはまった男女
を描いたこの作品は、しかし「ハードコア」(本番)だけ
が大きく取り上げられ、誠に不本意な扱いをされた。

 大島監督は、毒婦といわれた定が、実は愛に生き
た女であり、吉蔵はただ殺されたのではなく、それに
殉じたのではないか、という解釈をしたのだと思う。

 阿部定を演じた松田英子さんは、正に昭和の女を
力一杯に表現した。その頑張りに対し、大島組の美
術監督は、京小袖の白無垢の着物を用意し、それを
藤竜也さんから渡すように手配した。主演の藤さんも
京都の旅館の一室を貸し切り、日本庭園を望むその
部屋で「スタッフからの気持ちです!」と、松田さんに
その着物を渡したそうだ。その瞬間、松田英子さんは
大粒の涙を流したという。
 大島組のみんなは、表現者としての松田英子に最
大限の敬意を表し、また、藤竜也さんも共演した女優
さんに最大限の称賛を贈ったのであろう。

 愛の亡霊では、吉行和子さんと田村高廣さんという
日本の名優2人が登場する。吉行さんの周囲では、
いわゆるハードコア作品への出演を危惧する声が高
かったそうだ。しかし、40歳を過ぎても吉行さんの美
しさは変わらず、他方、田村高廣さんの人力車夫の
老いの悲しみや生活感の表現力には大いに感嘆した
ものである。

 この2作品が、日本では単にハードコア作品としての
評価をされたが、カンヌ映画祭でともに高い評価を得
たことを考えれば、当時の日本での扱いや妙なボカシ
などは何だったのだろうと今更ながらに思う。

 この2作品とももう一度、観てみたい映画である。


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サンフランシスコ人

9/28 「愛のコリーダ」をサンフランシスコの映画館で上映....

http://www.roxie.com/ai1ec_event/in-the-realm-of-the-senses/?instance_id=14713
by サンフランシスコ人 (2016-08-28 06:33) 

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