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黒澤明「天国と地獄」 [映画]

天国と地獄」は、1963年に公開された
映画である。身代金目的の誘拐というテーマ
を扱っているが、筋はあえて書かない。この
映画を見て、思ったところがいくつかある。

まず、既にフルカラーの時代に入っていたこ
の時期に、この映画はモノクロである。それ
が事件の暗さを表現しているようでもある。
しかし、1シーンだけ色が付く。それは、煙
突から立ち上る煙の色。これが事件解決のき
っかけになるシーンであるが、そこだけ鮮明
な彩色が施されている。
たぶん、カラートニングと呼ばれた技法によ
るものだろう。

あとは、撮影の時期。真夏の場面ばかりなの
に、実際に撮影が行われたのは2月。真冬で
ある。刑事たちは「暑い、暑い」と汗をぬぐ
い、半そでシャツで聞き込みをしているが、
本音は「寒い、寒い」だったのだろう。黒澤
明というおじさん、かなりの変人である。

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そして時代を感じるのが煙草。刑事たちの会
議では、どの場面でもやたらに煙草を吸うの
で、部屋がもうもうたる煙に包まれている。
今どきなら大顰蹙であろう。あと、薬物中毒
者の集まるアヘン窟のような場所が出てくる。
当時はたぶんヒロポンとかだろうが。中毒者
と思われる連中が一斉に寄って来る場面は何
とも不気味であった。

この映画のために、特急こだま号1編成を貸
しきった(けっこうな経費だっただろう!)
とか、鉄橋から見える家(小屋)が目障りだ
といって、この家を買い取らせて解体した、
とかさまざまな伝説が今に残っている。
とにかく、映画や映画監督がめちゃめちゃ元
気だった時代の作品といえよう。

007とダニエル・クレイグ [映画]

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先日、録画しておいた「007 カジノ・
ロワイヤル」をようやく観た。
ダニエル・クレイグ主演になった最初の作品である。

今までのジェームス・ボンドはすべて栗毛
だったのに対し、初のブロンドのボンドで
ある。ちょっとイギリス人ぽく無いところ
が感じられてしまう。あ、初代のショーン
・コネリーは栗毛・・・のかつらだけど(笑)

そして、何より「女好きの優男」というイ
メージだった今までの俳優に比べ、圧倒的
な筋肉量を持つ肉体。ちょっと最初は見慣
れない感じが強かった。しかし、観ていく
うちに、なかなかに面白い存在だなぁ、と
感じ始めていた。


以前に彼が出ていた映画を観たのは、確か
「ドラゴンタトゥーの女」であったと思う。
このお人はどちらかというと「性格俳優」
の部類に入ると思う。しかし、シニカルな
笑い顔や、自分のボスである「M」の家に
忍び込むという大胆さ、ボロボロにされる
まで拷問されても立ち直るというタフさ。
新しいボンドだなぁ、とつくづく感じた。

でも、演じているご本人としては、あまり
007に染まりたくは無さそうである。
4作で降りるという噂も流れている。まあ、
とにかく残り3作を順番に観てゆくといた
しませう。

「清須会議」2013年11月公開 [映画]

三谷幸喜さんというと、ちょっとコメディー
タッチの映画や演劇を作る人、というイメー
ジがあるが、なかなかに歴史通でもある。
その三谷幸喜監督が作った映画が「清須会議」。
尾張国清須城(清洲とも書く)で開かれた、
織田家重臣たちによる数日間の評定を描いた
ものである。

ややこしいのは、三谷組といえる常連の役者
さんが出ているので、今の大河ドラマ「真田
丸」とごっちゃになってしまうことである。

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主人公の一人は、織田家四天王の一人、柴田
権六勝家(役所広司さん)。男臭さがにじみ
出るような人物で、己の信条は絶対に曲げず、
ついでに空気も読まないというタイプである。
もう一人の主人公が羽柴秀吉(大泉洋さん)。
何で真田信幸が・・・と思ってはならない。
徹底的にデフォルメした秀吉がそこにいる。
極限まで小さく結った茶筅髷、妙に派手な着
物、腕力は無さそうだが口は達者という、ま
さに藤吉郎である。この二人に、四天王の一
人である丹羽長秀(小日向文世さん(ありゃ、
秀吉がここにも?)それに、新たに重臣に加
わった池田恒興(佐藤浩市さん)が加わる。
池田恒興がまた、ちょっと腹に一物ありそう
な男なのである。

そして、本来の四天王、滝川一益(阿南健治
さん)は関東で北条軍と戦闘中。なぜか、素
敵な金縛りの更科六兵衛(西田敏行さん)が
追いかけてくるという、小ネタ付きだが、こ
ちらは会議に間に合わない。

さて、上記4人が、織田家の跡継ぎに次男信
雄(妻夫木聡さん)か、三男信孝(坂東巳之
助さん)か、どっちを推すかで駆け引きを繰
り返す。そこに絡むのがお市の方(鈴木京香
さん)。このお市さんがすごい!眉を剃って
鉄漿をしているという、まさに歴史上正しい
お姿で登場する。ちょっと怖いけど!(苦笑)
そのお市さんは秀吉大嫌い!が高じて、つい
に男臭くて敬遠していた権六勝家になびく。

一方、圧倒的に不利だった秀吉は、黒田官兵
衛(寺島進さん)とともに川辺で一人の幼児
に出会う。これが何と、織田信忠の子「三法
師」ではないか!この子の存在に乾坤一擲の
勝負をかけて、秀吉は丹羽長秀を調略する。
ついに説得に負ける長秀。それまで冷静で汗
ひとつかかなかった小日向さんが、この場面
だけ脂汗を流しているのを見て、ちょっと驚
いた。(うむむ、凄い!!)

この後はネタばれ防止のため省略するが、生
きている更科六兵衛を出してみたり、織田一
族の人間が例外なく妙に鼻が高かったり、柴
田勝家が妙にセコかったりするのが、なかな
かに楽しい映画であった。歴史好きならきっ
と気に入ると思う。

「レッドクリフ」 [映画]

 三国志フリークの大部分は、吉川英治さんの小説
三国志」か、横山光輝さんの漫画「三国志」を読ん
でファンになったと思われる。その原典は魏の正史
「三国志」ではなく、後世に戯曲風に作られた「三国
志演義」で、こちらは蜀の国の目線で書かれている。


 さて、少し前に話題となった映画「レッドクリフ」は、
三国志の前半の山場である「赤壁の戦い」を題材に
している。主なストーリーは三国志演義のそれをなぞ
っている。しかし、多少の脚色というか違う点がある。

 まず、劉備軍は映画では呉軍と合流して赤壁に来
ているが、小説などでは赤壁には一度も現れていな
い。また、映画で重要な役割を果たす孫権の妹だが、
実際は劉備の正夫人になる「呉夫人」のことと思われ
る。確かにかなり破天荒な人だったようだが、ここま
でやんちゃでは無さそうだ。


 一番の違いは、諸葛孔明(金城武)と周喩(トニー・
レオン)との友情である。小説などでは、周喩は赤壁
で大勝利を得ながら、孔明の策略によって荊州を奪
われ、怒りのあまり憤死したことになっている。しかし、
映画では最初から最後まで「盟友」として付き合って
いる。


 どうもフリークには違和感のある映画だった。まあ、
大当たりしたのだから良しとしなければならないだろ
う。ついでに言うが、曹操をここまで追い込んだのだ
から、命を奪っておけば良いのに簡単に逃がしてし
まう。何故なんだ???


赤壁.jpg

「ワーテルロー」 [映画]

 「ワーテルロー」は、その名の通りフランスの皇帝
ナポレオン1世とウェリントン将軍が戦った大会戦を
描いた映画である。何故かイタリアとソ連の合作で、
オリジナル版は何と240分=4時間。家で見ていて
もさすがに腰が痛くなった。


 戦争と平和(1956年)とほぼ同じようなスペクタク
ルで、ソ連軍の全面的協力により、CGでは作り出せ
ない壮大な戦場が出現した。
 音楽はニーノ・ロータ。「戦争と平和」や「ゴッドファー
ザー」の音楽を担当した巨匠である。道理で音楽が
なかなかに良い。


 さて、映画はナポレオンがルイ18世(オーソン・ウェ
ルズ)を追い落とし、皇帝に復位するところから始まる。
 ナポレオンを演じるのはロッド・スタイガー。かの「夜
の大捜査線」の嫌味な署長役が思い出されるが、この
映画ではまさにナポレオンそのものである。何しろ動き
がそれっぽい。ただ言語は英語である(笑)このナポレ
オンの動きを知ったイギリスのウェリントン(クリストファ
ー・プラマー)は急遽、連合国に参集を呼びかけ、対仏
包囲網をしかける。

 一方、ナポレオンの側でも、連合軍が集結しない内に
各個撃破しようと考える。まずはブリュッハー元帥の率
いるプロイセン軍を破り、英・蘭連合軍に迫る。ウェリン
トンはこれを受けて、かねてから決戦地にしようと考えて
いたワーテルローに向けて撤退し、体制を立て直す。

 ナポレオンは英・蘭軍と独軍が合流するのを防ぐため
に、グルーシー元帥に3万3千の兵を与えて追撃させる。
 かくして、両軍合わせて14万余という大会戦が始まろ
うとしていた。しかし、前日は豪雨。なかなか両軍とも体
制が整わない。いつもなら神速をもってならすナポレオン
も何かぐずぐずしている。


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 ようやく天候が回復すると、それでも大砲が動かせな
いなどとして、開戦を昼にしてしまった。この遅れが後に
致命傷となる。戦いは英・蘭軍右翼のウーグモンの邸宅
への攻撃から始まる。この方面は一日中こう着状態とな
る。左翼は激戦となるが、英・蘭軍のピクトン将軍は真っ
先に戦死する。そして、砲撃戦、スコットランド騎兵の突
撃と全滅、ネイ元帥が率いるフランス騎兵の無謀な突撃
と迎え撃つ英軍ライフル兵の激闘と続く。


 ついに「戦機が訪れた!」と判断したナポレオンは無傷
の近衛兵3万を投入。しかし、英国の農民兵中心のライ
フル射撃で大損害を受ける。そして、森に中から黒い影
が!ブリュッハーのプロイセン軍であった。

 これでフランス軍は総崩れとなり、勝負が決した。この
戦いで破れたナポレオンは、フランスに戻るものの退位
を迫られ、セント・ヘレナ島に流された後、その地で死亡
した。彼にとっての最後の戦いとなった。


 それにしても4時間!まるで「戦争映画の『24』」である
(苦笑)

「三国志~龍の復活~」 [映画]

 CATVで繰り返し放送されたので、数回観た。
 この映画は、三国志をベースにしたもので、
主人公は超雲子龍(アンディ・ラウ)である。

 前半は、超雲が劉備の子、劉禅を曹操軍の中
を駆け抜けて助け出し、一躍英雄になるストーリ
ーである。若き日の超雲は蜀軍に志願し、兄貴
分の羅平安(サモ・ハン)とともに戦いの日を送る。
 その中で、次第に頭角を現し、劉禅を助け出し
ただけではなく、曹操と一騎打ちをし、その刀を
奪うという超人的な活躍をする。ちょっとやりすぎ
の感がある。

 その功から五虎大将軍の一人に位置づけられ、
その後は魏と戦い「常勝将軍」の名声を得る。

 それから数十年。すでに劉備は死に劉禅が皇
帝となっている。諸葛孔明は何としても北伐を行
いたいと、関羽の息子関興と張飛の息子張苞に
出陣を命じようとしている。そこへ、すっかり白髪
になった超雲が現れる。


 「軍師、なぜ大事の北伐から私をはずすのだ」
 「将軍、我らは老いた。思い出が生きるよすが
ではないか」
 「思い出は戦場に置いてきた。もう一度思い出
を取り戻したい」


 こうして超雲は出陣する。関興と張苞と別れ、
山道を行く彼の前に魏の大軍が現れる。実は孔
明は超雲の名声を利用しておとりにし、その間に
若い二将軍に魏領を奪わせるつもりだったのだ。
 追い詰められた彼は、超絶な武勇を見せる。
 しかし・・・。


 ネタばれ防止のためにこのくらいにするが、吉
川英治版「三国志」とかなりストーリーが違う。超
雲たちの兜はまるで洗面器のような形だし、若い
将軍の一人、鄧芝はまるでレゲエのようなヘアス
タイルである。だいたい、鄧芝は文官だったような
・・・?それにしても、アンディ・ラウの眼光は鋭かっ
たし、敵の司馬、曹嬰(曹操の孫娘 マギーQ)は
エキゾチックな美女であった。
 妙に印象に残る映画である。


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団地妻肉欲の陶酔 [映画]

 日活のロマンポルノ。玉石混淆ではあるが、中には
なかなかの作品もあった。その一つがこの作品である。

 「団地妻肉欲の陶酔」は、にっかつの1979年作品で
ある。主演は鹿沼えり。共演者は後に彼女の夫となる、
古尾谷雅人である。


 うさぎ小屋の団地で、閉そく感に苛まれていた岡妙子
(鹿沼えり)は、ある時、暴走族リーダーの青野(古尾谷
雅人)と知り合う。欲求不満の中で、彼に興味を惹かれ
ていく彼女。青野は、書店で万引きをしたら抱いてやる
という。古本屋で法律の本を万引きする彼女。すると、
青野は強引に彼女の中に入って来る。


 暴走族の仲間と付き合いだした彼女であるが、青野
に好意を持っていたエリ(マリヤ茉莉)の策略で輪姦を
されてしまう。
 ずたずたになった彼女を、青野はやさしく抱きとめる。


 しかし、そんな彼女を見て、夫の勝昭は急に欲望を
抑えられなくなり、団地の階段で彼女を乱暴に犯すの
であった。数日後、全ての抑圧から脱却し、団地のベ
ランダで洗濯物を干す彼女の姿があった…。


鹿沼えり.jpg

 日活の女優には美形が多いが、宮下順子さんの和風
美女に対抗する洋風かつスレンダーな女優がこの鹿沼
えりだったと思う。その彼女、最近は二時間ドラマなどで
時々見かける。そう言えば、同じにっかつの風祭ゆきも、
二時間ドラマの常連である。殺される被害者役が多いの
が少々残念であるが…(苦笑)


 実は、この作品の共演をきっかけに、古尾谷雅人と
鹿沼えり(絵里)は付き合い出し、その後結婚をする事
になる。そして、古尾谷雅人は次第に性格俳優として
名を上げることになるが、親族間での相続のもつれ等
から精神を病み、ついには自殺することになった。


 最近、鹿沼えりは女優に復帰している。また、その子
たちも俳優となっている。この作品をきっかけに、多く
の演者が生まれたことになる。


 そういう意味で、にっかつ作品の中でも思い出の深
い1作である。

「ツィゴイネルワイゼン」 鈴木清順監督作品 [映画]

 バイオリンを習っていた者にとって、一つの憧れ
だったのがこの曲である。ちなみにそれがしは、
最後の最後にこれを習得した。でも、今日はその
曲の話ではない。鈴木清順監督作品の映画のこ
とである。


 登場するのは二人の紳士…一人は師範学校の
独逸語教授、もう一人はその元同僚で風来坊…
らしい。教授「青地」の方は藤田敏八さん、風来坊
「中砂」の役は原田芳雄さんが演じた。この二人に
絡むのが、美貌の芸者、大谷直子さん。これがまた、
一人二役で、ややこしい。そして教師の妻が大楠道
代さん。怪しい三角・四角関係が繰り広げられる。


 そして、ストーリーが全く読めない。青地と中砂は、
旅先で芸者小稲(大谷直子さん)と懇意になる。そ
の後、中砂が妻を迎えたと聞き、青地は中砂の家
を訪ねる。すると小稲とそっくりな奥さん、園(大谷
直子さん二役)が現れる。園は娘を一人産んだ後、
悪性の風邪で死ぬ。すると中砂は乳母と称して後
妻を迎える。それが何と小稲。そっくりな二人が互
いを嫉妬する。

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 ストーリーの途中には、盲目の旅芸人3人が絡む。
 そして、それぞれの妻との四角関係が疑われる
場面もある。原田芳雄演じる風来坊中砂は旅先で
薬物(シンナー)中毒となり、あい果てる。彼の死後、
青地の家に大谷直子さん演じる中砂の妻が、いろ
いろな忘れ物を取りに来る。鎌倉の切り通しの道を
歩いてくる彼女はこの世の者かどうか怪しい雰囲気
である。


 そして難しいドイツ語の本の題名をすらすらと言い、
それを青地に探させる。最後には、サラサーテの言
葉の録音されているツィゴイネルワイゼンのレコード
を返して欲しい、という。青地は借りた覚えが無かっ
たが、彼の妻が中砂から借りて持っていた。青地は
中砂の家に返しに行くが、ついには彼自身が生死の
境すら怪しいという不思議な場面になり、終わる。


 目の前にあるのは三途の川の渡し場?異様な場
面だった。頭の中が混乱状態に陥ったが、いまだに
強い印象が残っているのだから、やはり名作なのだ
ろう。この作品で、原田芳雄さんが日本アカデミー賞
にノミネートすらされなかったのは何とも不思議であ
る。原田さんらしさ満点の「怪演」であった。

「乱」 黒澤明監督作品 [映画]

 黒澤明監督は、この映画を撮るのに執念を燃やし、
前作の「影武者」はこの映画のための練習だったと
いう説まである。しかし、この作品は…酷い。


 シェークスピアのリア王がモチーフになっているよ
うだが、台詞の精度が酷いのである。架空の戦国
武将、秀虎はある夢をきっかけに隠居を決意し、自
らは大殿となって院政を敷こうとする。しかし、長男
・次男に城を追われ、他国に亡命している三男の城
に入る。

 すると朝、わずかな供しか連れていない彼を、長
男と次男の大軍が取り囲む。供をしていた30騎の
一人が息も絶え絶えに天守閣に上がってくる。


 「大殿、城の中も外も敵だらけじゃ。地獄の沙汰
じゃ!」彼はそう言って息絶える。(何じゃそら?)


 まずこの台詞がおかしい。地獄じゃ、というならわ
かる。地獄のようじゃ、でも良い。沙汰が余分である。
 地獄の沙汰…とは閻魔大王が自らの前に引き出
された亡者に下す裁定である。


 さらに、彼が流浪の末、三男の三郎に助け出され
る。彼は三郎の馬に同乗し、城に向かいながらこう
言う。「積もる話が山ほどある」(え?)


 おいおい、日本語やり直せ。馬から落ちて落馬し
た、と同じではないか。黒澤作品は好きだが、ここ
まで台詞が変なのは耐え難い。しかも発狂した秀
虎の台詞をさんざん聞かされ、その上に仏画だの
無間地獄だの…宗教映画みたいな映画だった。


 時間の長さで腰の痛みだけが残った記憶がある。


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「影武者」 [映画]

 黒澤明監督の作品の中で「やや失敗作」ではない
かと思っているのがこれである。この次の「乱」は完
全に「失敗作」だと思うが、影武者についてはそれほ
ど酷くは無い。ただ、武田信玄という人物の描き方、
そして音楽の使い方に疑問がある。


 実はこの映画の予告編は魅力的であった。スッペ
の軽騎兵序曲にのって、影武者が甲州軍を鼓舞す
る場面や、兵が地平線から次第にその姿を現す場
面など、ワクワクしながら見ていたものである。

 ところが本編になったら、これらクラシック系の選曲
は皆無。今までの重々しい黒澤映画風音楽になって
しまった。序盤はけっこう素敵である。泥にまみれた
伝令の兵士が、城の坂道を駆け上がる。すると死ん
でいたのかと思われた赤や青の鎧武者たちがつぎ
つぎに立ち上がる。この場面を見たときは、黒澤の
才気、いまだ衰えず…!と期待した。


 しかし、中盤以降は…ストーリーのテンポが大幅に
遅くなり、憂鬱な映画になってしまった。やはり、当初
予定の通り、勝新太郎主演で製作した方が良かった
のではないかと思う。残念至極である。


影武者.jpg

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