SSブログ

黒澤明「天国と地獄」 [映画]

天国と地獄」は、1963年に公開された
映画である。身代金目的の誘拐というテーマ
を扱っているが、筋はあえて書かない。この
映画を見て、思ったところがいくつかある。

まず、既にフルカラーの時代に入っていたこ
の時期に、この映画はモノクロである。それ
が事件の暗さを表現しているようでもある。
しかし、1シーンだけ色が付く。それは、煙
突から立ち上る煙の色。これが事件解決のき
っかけになるシーンであるが、そこだけ鮮明
な彩色が施されている。
たぶん、カラートニングと呼ばれた技法によ
るものだろう。

あとは、撮影の時期。真夏の場面ばかりなの
に、実際に撮影が行われたのは2月。真冬で
ある。刑事たちは「暑い、暑い」と汗をぬぐ
い、半そでシャツで聞き込みをしているが、
本音は「寒い、寒い」だったのだろう。黒澤
明というおじさん、かなりの変人である。

images.jpg


そして時代を感じるのが煙草。刑事たちの会
議では、どの場面でもやたらに煙草を吸うの
で、部屋がもうもうたる煙に包まれている。
今どきなら大顰蹙であろう。あと、薬物中毒
者の集まるアヘン窟のような場所が出てくる。
当時はたぶんヒロポンとかだろうが。中毒者
と思われる連中が一斉に寄って来る場面は何
とも不気味であった。

この映画のために、特急こだま号1編成を貸
しきった(けっこうな経費だっただろう!)
とか、鉄橋から見える家(小屋)が目障りだ
といって、この家を買い取らせて解体した、
とかさまざまな伝説が今に残っている。
とにかく、映画や映画監督がめちゃめちゃ元
気だった時代の作品といえよう。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。